終身雇用や年功序列といった日本特有の雇用システムに変化が生じている近年。
働き方の選択肢が増えたことから、「将来どのような自分になりたいか」「どんな仕事をしたいか」を定期的に見直し、自分自身の「キャリアプラン」を立てておくことをおすすめします。
この記事では、キャリアプランの重要性や、転職時の面接を意識したキャリアプランの立て方を紹介します。
もくじ
まとめ
キャリアプランとは?
キャリアプランとは、理想的な将来の自分の姿を思い描き、どのように行動すべきかを具体的に計画したものです。
かつての日本では、新卒入社した企業で生涯勤めることが美徳とされていました。一度入社すれば、企業側がある程度キャリアプランを用意してくれていたとも言えるでしょう。しかし、終身雇用や年功序列の雇用システムが崩壊した近年では、自らキャリアプランを描く必要があります。
例:20代男性/営業職の場合
目標は、30歳までに営業チームのマネージャーとして活躍すること。そのためには営業成績を積み上げていく必要があります。「1年後までには個人で10社の新規案件を獲得する」「3年後には営業部トップレベルの実績を上げる」「5年後にはマネジメントスキルの習得を目指し、リーダー候補となる」といった具合に計画し、10年後への道筋を明確にします。
キャリアプランを考えるメリット
「所詮、計画なのだからキャリアプランを立てても意味がない」と思う方もいるかもしれません。しかし、キャリアプランの立案には以下のようなメリットがあります。
―「今何をすべきか」が明確になる
ぼんやりと将来の理想像を描いていても、実際にそれに向けた行動を取らなければいつまで経っても理想の姿に近づくことはできません。理想の姿から現在の自分の状況までを逆算しながら、期限を決めて具体的な行動を計画することで、今何をすべきかの行動指針が明確になります。
キャリアプランを考えると、それまでに身に付けるべきスキルやとるべき行動までを考える必要があるため、必然的に「今何をすべきか」が明確になります。例えば、「10年後に年収800万円を達成する」という目標を掲げた場合、「5年以内に課長に昇進」「3年以内に簿記2級取得」などのように、目下でやるべきアクション内容が分かります。自分の思い描く夢が漠然とした状態から実現のために必要な具体的な行動が分かるようになるでしょう。
―仕事のモチベーションを維持しやすくなる
現実離れした業務目標や曖昧な目標を立てると、今の業務が自分の理想実現のためにつながっているかどうかの確信が持てず、モチベーションが低下してしまうこともあります。
現実的なキャリアプランを立てると、人生のマイルストーンが定まり、ひとつひとつの業務が「理想の自分を作るためのステップ」に変わります。現在と理想とする将来像のつながりが感じられるので、仕事のモチベーションを維持しやすくなるでしょう。
―転職時の軸が明確になる
キャリアプランを立て、そのプランを基準に行動すると「現在の業務内容ではプランの達成に必要な経験やスキルが得られない」といった課題が出てくるかもしれません。配置転換や異動でもその課題が解決できない場合は、転職を検討することになるでしょう。自分のキャリアを考えた上で必要な転職であるならば、転職において求める軸が明確に言語化できるはずです。転職の動機自体が前向きであり、選考時にも自分の今後のキャリア想定をはっきり伝えやすくなります。結果として、納得のいく転職につながることでしょう。
転職時の面接でもキャリアプランを聞かれることがある!
転職時の面接でもキャリアプランにまつわる質問をされることがあります。具体的には、以下のように尋ねられることが多いです。
あなたのキャリアプランを聞かせてください
10年後はどのようになりたいですか
将来の目標を教えてください
将来の夢に向かって努力していることはありますか
質問の内容はそれぞれ異なりますが、いずれもキャリアプランを具体的に考えていなければ答えられないものです。このような質問をされたときにもしっかりと答えられるよう、自分なりのキャリアプランを立てて、対策しておきましょう。
―面接官がキャリアプランについて質問する意図とは?
面接官がキャリアプランについて質問する意図は、大きく分けて2つあります。1つは、応募者のキャリアプランと企業のビジョン・求める人物像がマッチしているかどうかを見極めるため。もう1つは、 計画性と熱意をもって業務に取り組める人材かどうかを判断するためです。
面接官からキャリアプランに関する質問をされたときは、このような意図があることを念頭に置いて回答しましょう。単に自身のキャリアプランについて述べるのではなく、そのキャリアプランが応募した企業でどのように実現できるのか、というところまで踏み込んで回答すると、企業とのマッチ度が高いと判断してもらえるでしょう。例えば、将来的に独立したいと考えている場合、「これまで経験してきたエンジニアとして独立したいと考えているため、専門的なスキルを高めることに加えて、事業戦略・経営戦略についても知識を深めていきたいと考えています。そのため、システム開発業務だけでなく、戦略立案から一気通貫して携わることのできる御社で経験を積みたいです。また、役員との距離が近いスタートアップ企業という環境で、さまざまな知識や考え方を吸収していければと思っております」というように、その企業で叶えられることや貢献できることを絡めながら答えると良いでしょう。
ステップ別に解説!キャリアプランの立て方
ここからは、ステップ別にキャリアプランの立て方を解説します。ぜひ実践してみてください。
STEP1.過去の自分について振り返る
まずは、過去の自分について振り返ることから始めましょう。現在と将来について考えるためには、過去を振り返ることは欠かせません。人との出会いや成功体験・失敗体験、そこから人生の棚卸しをすることで、意識していなかった自分の価値観や、得意分野・苦手分野が見えてきます。
「人生のモチベーショングラフ」の作成もおすすめです。縦軸をモチベーション、横軸を年齢としてグラフを作ってみましょう。入学・卒業・就職・昇進・転職など人生の契機となった出来事を書き込み、その時点でのモチベーションを数値化し、線で結んで完成させます。このグラフを作るメリットは、自分のモチベーションが上がる要因が明確になることです。モチベーションの根源を知れば、自分が何にやりがいを感じ、どんなことに喜びを覚える人間なのか理解を深めることができます。
STEP2.現在の自分や価値観を見つめ直す
次に、現在の自分のスキルや価値観、興味・関心などを見つめ直していきます。ここで重視すべき点は、「現在の仕事に対して何が満足/不満なのか」「仕事において大切にしていることは何か」といった仕事に直結する部分はもちろん、「仕事とプライベートのバランスはどれくらいが良いか」「趣味や興味のあることは何か」といったプライベートな面も見つめ直すことです。
自分自身の潜在的な価値観は「転職するか否か、結婚するか否か、出産するか否か」など、各ライフステージで判断に迷った際の「指針」として機能します。そのため、自分の価値観はキャリアや人生においても重要な視点です。自分の価値観が具体化できないときは、身近な人にヒアリングして客観的な自分の姿を探ってみると、新たな自分の発見につながり、深みのある分析になるでしょう。
STEP3.将来の理想像をイメージする
過去・現在について整理できたら、これまでの経験や自分の価値観に沿って、将来の理想像をイメージしていきます。そして、キャリアプランは、5・10・20年後という 長期的な目線で、できるだけ 具体的に計画することが重要です。
仕事上での理想像であれば、「10年後に課長としてメンバーを率いる」「5年後に資格を取得し、実務を習得しながら10年後に正規の専門家として転身する」「10年後に独立して事務所を開設する」といったことが考えられます。
経済面や生活面であれば、「5年後に結婚し、10年後に2人目の子どもを産む」「10年後、都心に3LDKの新築マンションを購入する」といった具合です。目標が具体的であればあるほど、はっきりとした道筋が見えてきます。
もし理想像が思い浮かばないという方は、身近な友人や上司、恩師、有名人などにロールモデルを探してみてください。目標とする人物の経歴を参考にすると、キャリアプランを整理しやすくなります。また、5年前から現在まで、とか、10年前から現在まで、という過去から現在までの変化を思い出すことで、これから先の5年後、10年後が考えやすくなることもあります。
STEP4.現状とのギャップを埋めるために目標を細分化する
STEP3でイメージした将来の理想像は、現時点では高い目標に過ぎません。現在の自分と大きなギャップがあることは当然のことと考え、そのギャップを埋めるために目標を細分化する必要があります。
ゴールを10年後に設定した場合、10年後→8年後→5年後→3年後→1年後といったように逆算し、短期的な目標もあわせて設定しましょう。例えば、「10年後にITプログラマーとして独立するためには、8年後までに大口の案件でリーダーポジションをこなす必要がある」「5年後までに、実績とともに○○の資格を取得していなくてはならない」「資格取得に向けて1年後までにこの本を使って勉強を開始する」といった流れで目標を落とし込んでください。
以上の4つのステップを踏むことによって、過去・現在の自分を的確に理解した上で、将来の理想像に向けて実現性の高いキャリアプランを立てることができるでしょう。
キャリアプランを立てる上での年代別のポイント
前述のキャリアプランの立て方は一般的なものであり、実際には年齢によって気をつけるポイントが異なります。ここでは、キャリアプランの立て方における注意点を年代別に解説します。
【20代】キャリアプランは軌道修正するものと考える
20代は社会人としてのキャリアが浅く、転職においては経験やスキルよりも、ポテンシャルや熱意が重視される傾向にあります。仕事の選択肢は広いため、働いていく中で思い描いていた理想像が変わっていく可能性も十分あるでしょう。
そのため、一度立てたキャリアプランが絶対的なものだと思わず、適宜プランを振り返るようにしてください。状況に応じてキャリアプランの軌道修正を行いながら、自分自身の将来像・新たな理想に向けてリプランニングしていきましょう。
【30代】自分の市場価値・ニーズを把握する
30代になると、社会人としてのキャリアをある程度積んでいることでしょう。これまでの経験やスキルを活かして自分のやりたいことができるか、今後どのように企業や社会に貢献していけるかという視点でキャリアプランを立ててみてください。
例えば、「営業スキルを応用し、顧客視点の新商品プロモーションを実現する」「宅建士としての知識やスキルをさらに磨くため、不動産鑑定士試験にチャレンジする」など、自分の市場価値やニーズを把握した上で実践的なプランを立てましょう。
【40代】ワークライフバランスを意識する
40代になると家庭を持つ人も増えるので、自分自身のキャリアパスだけでなく、子どもの進学など家族の将来についても考える必要が出てくるでしょう。さらに、職場でもマネジメント層として部下や後輩を育成していく立場になることが多いはずです。そのため、部下や後輩が自らの背中を見ていることを意識する必要があります。20代・30代が目指す理想的なモデルになれるよう、仕事だけでなく、家族との時間・趣味の時間なども含めたワークライフバランスを意識してキャリアプランを立てていくことも大切な視点です。
なお、40代ではなかなか希望通りの条件で転職することが難しいという一面もありますが、経験を活かしてフリーランスや業務委託で働いたり、副業をしたりするといったプランに進む人もいます。
キャリアプランを達成するには「定期的な振り返り」がカギ!
キャリアプランは立てるだけでは意味がありません。プランを実現していくためには定期的な振り返りが不可欠です。
具体的には、四半期・半期といったスパンで定期的に計画を見直し、遅れやズレを確認してみてください。その原因を明確にして、克服する方法を考えてみましょう。例えば、資格取得に向けた勉強が遅れている原因が「仕事が忙しくて勉強の時間が取れない」ことだと判断したら、仕事を効率化して勉強の時間を確保するといった改善策が考えられます。
また、当初のキャリアプランからやりたいことが変化する場合もあるでしょう。そんなときは、思い切って理想像を再考するようにしてください。
まとめ
将来の自分の理想像を思い描き、そこに向かう具体的なアプローチを考えることは、常に目標をもって仕事や生活に向き合う姿勢につながります。キャリアプランを立てると、将来に向けて準備しやすくなるだけでなく、仕事の充実感や満足感にも寄与するでしょう。
なぜ仕事をしているのかわからないという方や、将来何をすべきか迷っているという方は、あらためて過去の振り返りやキャリアプランの立案から始めてみることをおすすめします。
この記事を監修したキャリアアドバイザー:
八重樫 勇輝
株式会社Reboot代表取締役
年齢:29
出身地:岩手県
趣味:漫画・映画鑑賞
経歴:
自分の転職活動の際、周囲のサポートで助けられたことをきっかけに、今後は自分が求職者の助けになることを決意し、起業。
現在は代表自ら求職との面談・就職支援を精力的に行う日々に明け暮れている。
求職者の皆様への一言:
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