転職は、人生にかかわる大きな決断のひとつです。そのため、転職をしたいと思うものの、なかなか決断できない人も多いのではないでしょうか。実際、転職によって満足のいく結果に至ったという人もいれば、必ずしもそうではない人もいます。転職先が見つかったものの、年収や待遇面で不満が出てきたり、聞いていた仕事内容と違ったり、入社後にミスマッチに気付き、転職を繰り返すことになってしまうなんてことも。
この記事では、そんなよくある転職の失敗例をご紹介し、万が一入社してから失敗に気付いたときの対処法や、転職を頻繁に繰り返さないために押さえるべきポイントなどを合わせて解説します。
もくじ
典型的な転職失敗例5選とそれぞれの失敗が発生する理由
以下に転職時によくある転職の失敗例とその失敗が発生する理由をご紹介します。
―失敗例1:思っていた業務内容と違う
「同じ業界・職種への転職だから大きな変化はないだろう」などと思い込み、転職先の業務内容をよく調べずに転職をしてしまうと、実際は自分の希望通りの業務が行えず、結果的にすぐに転職を繰り返すことにつながってしまう恐れがあります。
このような失敗が発生する理由は、そもそも業務内容をあまり把握せずに同業界・職種の求人の選考を受けたり、求人票に記載されている情報だけを確認して満足したり、と選考前の情報収集の不十分さが原因となることが多いです。求人票に記載されている仕事内容は、文字数に制約がある中で箇条書きなど簡素なものだけ記載されている場合や、採用に不慣れな現場社員が記載しているケースもあります。そもそも、文字だけでは実際の業務内容がうまく理解できていない可能性が高いので十分に注意が必要でしょう。
―失敗例2:給与・待遇などの労働条件が聞いていた内容と違う
仕事のやりがいなどほかの条件を優先した結果、給与・待遇面は譲歩したということであれば自分が納得した状態で働けるので後悔につながることは少ないかもしれませんが、入社前の自分の確認不足によるものであれば、入社後に大きな後悔となってしまうこともあり得ます。希望していた年収を下回ってしまう、土日祝休みのはずが月に何回も休日出勤を強いられるなど、事前に聞いていた内容と違うと転職先でも不満が募ることとなり早期退職につながりかねません。
このような失敗が発生する理由は、入社前の「労働条件通知書」の確認不足が原因であることが多いです。企業は採用した人に対してどのような条件で働いてもらうかを明示する義務が労働基準法第15条、労働基準法施行規則第4条によって定められています。その義務を果たすために企業から入社前に「労働条件通知書」が示されることがよくあります。そこには、 給与・待遇はもちろん休暇、勤務地などについても明記されています。そこで自分の希望と異なる条件が明記されていないか確認を怠ってしまうと、入社してから不満に思うことが出てきてしまうことがあります。
―失敗例3:思ったよりも活躍できない
会社が変わってもこれまでの経験とスキルを活かしてすぐに即戦力として活躍できると思って転職したが、転職先では思うようにいかないということもよくあります。職種は同じでも業界や会社が変われば、求められるスキルも異なってきます。もちろん未経験の職種にチャレンジする場合は、新しいスキルを多く学ぶ必要があり、よりそのギャップを感じるでしょう。
このような失敗が発生する原因は、企業側が求めるスキルと自分のスキルのミスマッチによるものです。その企業で業務上必要なスキルを事前に具体的に把握できていないとよくスキルのミスマッチが起こります。これも 入社前の情報収集が足りないために発生する失敗だと言えます。求人票に記載されている情報など与えられる情報のみ確認し、応募先企業での仕事で必要なスキルを具体的にイメージできないまま入社を決めると、いざ入社してから自分のスキルが思ったよりも活かせず悩んでしまうこともあり得ます。
―失敗例4:社風が合わない
「社風」はその企業独特の雰囲気を意味します。例えば、体育会系のノリが強い企業や、業績に応じて出世が決まる実力主義の企業、業務中オフィスでは誰一人として喋らず落ち着いた雰囲気の企業など、企業によって社風は様々です。入社してから自分の性格と企業の雰囲気に合わないことに気付き、ストレスが溜まってしまうなんてことにもつながりかねません。
このような失敗が発生する原因も、やはり入社前の情報収集不足と言えるかもしれませんが、企業の社風が自分と合うのかどうか入社前に見極めることは非常に難しいものです。配属される部署によっても職場の雰囲気は異なることもあるので、事前にすべてを回避することは難しいものかもしれません。
ただし、事前に少しでも社風を把握するために確認できるものはあります。応募先企業の社長のメッセージ、企業理念や 配属先のチームメンバー構成などです。企業は判断に迷ったときに、理念に基づき判断を下すことが多く、それが社風につながることも考えられます。また、チームの男女比や年齢層などを聞くと、具体的に自分がどの立ち位置で働いていけるかイメージできることもあります。働いてみてからでないと分からないことが多いものの、事前に確認できる情報は集めておいたほうが良いでしょう。
―失敗例5:前職を退職したことを後悔する
前職への不満を解消したいという思いが先行し、勢いで仕事を辞めてしまったが、よく考えると転職前のほうが好条件で働けていたのではないか、と後悔してしまうのもよくあるケースです。例えば「給与が不満で転職したけれど、新しい職場は福利厚生が悪く、総合的に見ると手取りが減ってしまった」といったケースです。
このような失敗が発生する原因の多くは「自分の希望がその転職によって叶えられるのか」が、しっかりと確認できていないことが挙げられます。例えば上記の例でいうと、「手取りの収入を増やしたい」という希望があったにもかかわらず、その希望を叶えられる企業選びが行えず、結果として後悔の残る転職となってしまっています。今の職場の不満を転職によって改善したいと思うのであれば、自分の希望を明確に決めて、それに見合った企業を選ばないと、後悔の残る転職となってしまう可能性があります。
転職後すぐに辞めるのはNG?入社後、失敗したと思った時の対処法
転職後にミスマッチに気付くことも少なくありません。しっかり事前に調べて入社したものの、働き始めたら思っていたのと違うなどということはよくあることです。ここからは入社後にすぐ辞めたいと思ったときにどうするべきか、対処法を2つご紹介します。
―対処法1:できれば今の職場で経験を積む
入社後に「失敗した」と気付いても、すぐに辞めるのは得策ではありません。「自分に業務スキルが足りない」「社風に馴染めない」など、いくつかの悩みは時間が経てば解決する場合もあります。
働く環境が変われば、今までとは違う働き方を求められるので多少のストレスはどの企業に転職したとしても感じるでしょう。スキルが足りないと思うようであれば、その分野の本やWeb記事を読んだり、先輩社員の人に意識的に取り組んでいることを聞いたり、資格が業務上有利に働くのであれば資格の取得を検討したり、など自分で工夫すれば解決できることもあるでしょう。
また、社風に馴染めないようであれば、まずは社内にひとりでもいいので味方をつくることが大切です。業務のちょっとした質問をしたいとき、つらいとおもったことを相談したいときに、話を聞いてくれる味方がいるとストレスが緩和される可能性があります。同時期入社の人や身近な先輩社員など、頼れる人を探しましょう。
○在籍期間の短さは再転職の際に不利に働くことも
1年未満の離職や複数の職を転々としている場合は、再就職の際の選考時に「この人を採用しても、またすぐに辞めてしまうのでは」と企業から思われてしまう可能性があり、選考を通過しにくくなる可能性があります。次の転職活動でのネガティブポイントを減らすためにも、すぐに退職するのではなく3か月は頑張ってみるなど期間を決めて一度踏みとどまりましょう。
―対処法2:心身への負担が大きければ再転職を検討する
入社直後に「辞めたい」と思っても、できれば短期間での退職は避けたいところです。しかし、心身への負担が大きい場合は再転職を検討しましょう。慢性的な疲労感が続いたり、集中力が続かなくなったりしているならば、体力的にも精神的にも相当な負荷が身体にかかってしまっている可能性があります。過大なストレスは、自分の身体を壊しかねませんので、無理をせず次の転職先を探しましょう。ただし、次の転職先でも「何を叶えたいのか」という転職の軸は決めてから転職活動を行うようにしてください。
○前の会社に出戻りすることも選択肢のひとつ
前の会社を円満に退社し、自分が前の会社に戻ることを希望するなら、元上司に相談することもひとつの方法です。「出戻り」という言葉に良くない印象を持つ人もいますが、新しい人材を育てるよりも既に業務内容を知った人、人柄を知っている人を採用することは、会社としてもメリットがあります。そのため、出戻りでも十分に採用をされる可能性があります。
失敗を繰り返さないために。押さえておきたい再転職時のポイント
転職後にミスマッチに気付き、結果としてもう一度転職活動を行うことになった際に、どのような対策が必要なのでしょうか。ここからは、そのような失敗を繰り返さないために押さえておきたいポイントを6つ解説します。
―失敗した原因を分析する
なぜ失敗してしまったのか原因を分析することは非常に大切です。転職先の情報収集を怠って自分の希望が全然叶えられない結果となってしまった場合など、失敗した原因は必ずあります。事実を謙虚に受け止めて分析することが必要不可欠です。安易に転職先を選んでしまったと感じるのであれば、企業についてどのような部分が情報収集不足だったと感じるのか、具体的に分析をしましょう。「退職してから転職活動をしたため、休職期間が長くなることを恐れて早く転職先を決めたかった」などの理由であれば、次回は転職活動を在職中に行うなどの対策が見えてきます。原因を分析し、次の転職活動に活かしましょう。
―キャリアビジョンを具体的に描く
キャリアビジョンとは、1年後3年後5年後など、自分が将来なりたい姿のことです。自分が好きなこと、得意なことからヒントを得て、到達したい目標を決めたら、今やるべきことが見えてくるでしょう。また、採用担当者は「すぐに辞めてしまう人」を採用しようとは思いません。「1年後には御社で○○の実績を残し、3年後には○○のプロジェクトリーダーとして活躍したいと考えています」など、 中長期的なキャリアビジョンを踏まえて入社志望を伝えることができれば、長く働くアピールにもつながります。自分の明確なキャリアビジョンを、説得力を持たせた形で採用担当者に伝えることができれば、ポジティブな印象を与えることができるでしょう。
―転職によって叶えたいことを明確にする
仕事の悩みがすべて解決して大満足な転職は現実には難しいものです。つまり転職では、自分が叶えたいことに優先順位をつける必要があります。高い水準の給与なのか、通いやすい勤務地なのか、それとも憧れていた仕事内容なのか、自分は転職によって何を叶えたいのか明確にしておきましょう。
ただ優先順位のつけ方がわからないという人もいるでしょう。そういう人は、まず今の会社での不満をできる限り細かく洗い出してみるところから始めましょう。そこから絶対に改善したい条件、できれば改善したい条件など大まかに分類します。最初は絶対に改善したいと思う現状の不満を解消するための条件を設定し、求人を探しましょう。そこから徐々に譲歩できる条件があれば条件を変更し、自分で納得した状態で求人を選ぶようにしましょう。
―自分の市場価値を冷静に見直す
「市場価値」とは、「ビジネスの場でどれだけ企業から必要とされている人材か」を表す言葉です。市場価値は、すぐに使える専門知識だけではなく、「営業事務歴3年」「国内法人営業歴5年」などの職歴によっても変わります。前職で営業成績1位を獲得した、コンサルティングを担当したクライアントの売上を前年比150%アップさせたなど、具体的な実績があれば、企業側も評価がしやすくなるため、自分の実績を整理しておきましょう。
自分の市場価値を知るためは、転職サイトに登録して自身に来るオファーの役職や年収から市場価値を判断したり、転職エージェントに聞いてみたりすることで知ることができます。自分の正しい市場価値を知ることで、応募する企業を絞りやすくなるほか、 条件面のすり合わせがスムーズに進められることもあります。また、現在の市場価値を知ることで、 理想の役職や年収を得るためにはどんな経験やスキルが必要なのかを判断することもできます。
―口コミサイトや求人サイトなどを介して社風を確認する
社風は、選考で最も確認しにくいもののひとつです。採用担当者から自分の企業の悪いことを伝えることは少ないですし、客観性に欠ける可能性もあります。社風を確認するために、求人サイトやその企業の採用サイトなどで実際にオフィスの風景や社員が働いている様子などが画像や動画で紹介されていることもあるので、そういったものをチェックしてみたり、 口コミサイトや転職エージェントを利用すると良いでしょう。しかし、ネットに関しては、情報を全て鵜呑みにしないよう注意しなければなりません。SNSは匿名性が高く、ネガティブな情報に偏ることもあります。悪いことばかりではなく、良いことも中立な立場で書かれているサイトを選び、なおかつ参考程度にとどめておきましょう。
また、人事・採用担当者ではない先輩社員との面談を依頼するのもひとつの手です。必ずしも面談に応じてくれるわけではありませんが、実際一緒に業務を行う人から話が聞ければ、具体的な業務内容や会社の雰囲気など気になることが聞けます。面談を依頼するタイミングとしては、内定後がおすすめです。採用合否に影響を与えることがないので、気兼ねなく様々な質問ができます。
―業務内容・労働条件などの情報を入念に収集する
繰り返しになりますが、就職活動は情報収集が重要です。求人票に記載されている応募条件を確認しておくことはもちろんのこと、選考時にこちらから質問しても良いでしょう。ただし、採用が決まっていない段階で休日や給与などの労働条件をストレートに聞くことは、採用担当者の心証を悪くしてしまいかねません。例えば「残業はありますか?」と聞くのではなく「一日の仕事の流れを教えてください」など業務に関連性のある質問に置き換えて聞くと良いでしょう。これらの情報を集めることで、入社後のギャップを少なくすることができます。
また、入社後に「聞いていたことと違う」といったトラブルを避けるためにも、内定から入社するまでの間にもらう「労働条件通知書」にしっかり目を通してください。雇用契約書とは違って、労働条件通知書には、業務内容・休日・賃金などについて明記されています。書面内容に矛盾を感じたら、すぐに内定先の担当者に確認を入れましょう。万が一、希望と異なる条件が明示されている場合は内定先に交渉し、認められなければそこで入社を辞退するという選択肢も視野に入れましょう。
また、給与に関しては、入社後の評価体系など人事制度によって賞与や昇給の仕組みが異なりますので、採用担当者から説明の機会を持つことをおすすめします。
転職の失敗に関するよくある質問
転職の失敗に関するよくある質問を以下に2つまとめています。失敗を未然に防ぐためにもどのような疑問や不安を抱える人が多いのか、事前に確認しておきましょう。
Q. 転職に失敗してしまったらどうすべき?
転職後に失敗したと気付いた時でも、基本的にすぐに再度転職することは控えたほうが良いです。あまりにも在籍期間が短いと次の転職活動で不利に働く可能性があるためです。ただし、時間が経っても解決しないような悩みがあったり、大きすぎるストレスがかかり続けたりする場合は、早めに再就職先を探すのもひとつの手です。もう一度転職をすると決心したら、やみくもに転職活動を始めるのではなく、なぜ今回の転職が失敗につながってしまったのかきちんと原因を考えて、次の転職活動に活かせるようにしましょう。
Q. なぜ転職で失敗が起きるのか?
転職で失敗が発生する理由の多くは、入社前の情報収集不足によるものです。条件や待遇、社風や仕事内容など求人票に記載の内容だけでは全てを把握しきることは難しいのです。そのため、内定後に通知される「労働条件通知書」の内容と自分の希望に相違はないか確認する、社内の雰囲気を確かめるために内定後に社内を見学させてもらうといった出来る限りの行動をとり、入社前に情報を仕入れておくことが大切です。
まとめ
転職はもちろん良い結果につながることもありますが、想定していたことと異なる結果になることもあり得ます。在籍期間があまりにも短い場合の再転職は採用担当者に良くない印象を持たれる可能性がありますので、できれば避けたいところです。転職を繰り返さないためには、入念な事前の企業・業界における情報収集を行い、なるべく転職後のミスマッチが起きないようにすることが大切です。
また「今の会社を辞めること」が先行し、自分のキャリアビジョンを明確に定めないまま拙速に転職活動に行動を移す人も少なくありません。そのような場合、仮に転職先が決まったとしても満足のいく転職だったのかどうか判断できず、また些細な不満から転職を繰り返すようなことになりかねません。必ず、転職を失敗しないためにも「何を叶えたいから転職をするのか」という希望条件の取捨選択や優先順位を定めてから転職活動を行うようにしましょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー:
八重樫 勇輝
年齢:28
出身地:岩手県
趣味:漫画・映画鑑賞
経歴:
自分の転職活動の際、周囲のサポートで助けられたことをきっかけに、今後は自分が求職者の助けになることを決意し、起業。
現在は代表自ら求職との面談・就職支援を精力的に行う日々に明け暮れている。
求職者の皆様への一言:
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