転職を考えている人の中には「転職は35歳までが限界」といった厳しい言葉を耳にした人は多いのではないでしょうか。そのほかにも「28歳まで」や「32歳まで」に転職をした方が良いという噂を聞いたことがあるかもしれません。では、なぜこのような特定の年齢を境に転職が難しくなると言われるようになったのでしょうか。
この記事では、そのような年齢による転職限界説の真偽や、転職市場の最近の動向を踏まえて年齢別の転職成功のポイントなどを解説します。自身の年齢と照らし合わせて参考にしてみてください。
もくじ
転職できる年齢に限界がある?近年の転職市場の動向から分析
「○○歳転職限界説」といった、特定の年齢を転職する限界年齢と定めるような噂がありますが、実際に転職をする際に限界年齢というものが存在するのか詳しく解説していきます。結論から述べると、統計データ上では必ずしもそうとは言い切れない状況が見て取れます。
総務省統計局の「労働力調査」結果によると、たしかに25歳~34歳の転職者人口がどの年代よりも多いですが、35歳~64歳までの各年代の転職者も多いことが分かります。このことから、35歳以上であっても多くの転職者が存在することが分かります。
また、上図の年代別の転職者比率(就業者に占める転職者の割合)を見てみると2020年まで35歳以上の年齢では緩やかに上昇傾向が見られます。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から全体的に転職者数も減少し、転職者比率も下がる結果となりましたが、15歳~34歳と35歳以上で比較をしてみると、転職者比率の減少幅は35歳以上の方が少ない結果となりました。つまり、 35歳以上の転職者は、若年層の転職ほど大きな影響がなかったと考えられます。
その要因としては、長期のキャリア形成を見据えた若年層の採用ではなく、即戦力を求める企業が増えたことが挙げられます。新卒採用や第二新卒など20代の採用は、採用後戦力として活躍できるようになるための教育期間がある程度必要になる可能性が高く、そのような余力のある企業が減り、経験豊富なベテランの採用のみに限定した企業が増えたと推測できます。
なぜ転職の限界年齢があると言われるようになったのか
28歳・32歳・35歳と、なぜその年齢だけが転職の限界年齢と言われるようになったのか、詳しく解説していきます。
まずは、最も転職市場においてよく聞かれる35歳限界説についてです。
35歳限界説は、35歳を過ぎると企業が求めるスキルや経験のハードルが上がり、採用の難易度が上がるため、その前に転職をした方が良いというところから設定された年齢です。そのため、 管理職やマネジメント経験必須の求人が多くなり、応募できる求人数が減ることも考えられます。
しかし、上述のとおり35歳以上であっても多くの転職者が存在します。そのため、35歳を過ぎると転職ができないということはありません。ただし、企業から求められるスキルや経験においては年齢ごとに変化していくと考えておいた方が良いでしょう。
また、35歳以上を対象にした求人の絶対数は、年齢が上がれば上がるほど減少する傾向にあるので、年収や職種、勤務地などの自分の希望条件がすべて満たされている求人が必ずしも存在するとは限りません。結果として、いくつかの条件を諦めなければいけない可能性もあります。
28歳限界説は「30歳までに一人前に仕事ができるようにするため」という考え方に基づいて設定されたと言われています。転職先で一人前になるためには2年ほどかかると考えられているため、30歳から逆算し、2年前の28歳という年齢が節目と言われるようになりました。
そのため、「28歳で転職ができなくなる」と捉える必要はありません。20代後半であれば長期のキャリア形成を考えてポテンシャルを重視して採用する企業もあるため、「未経験の業界・職種へ転職を考える場合は28歳までが転職しやすい」程度の意味合いで捉えると良いでしょう。
32歳限界説は、年下上司が年上部下を指導するという体制を避けるため、「上司が年上、部下が年下になるよう採用年齢をコントロールする」採用方針を根拠にした考え方に基づいて設定されたと言われています。32歳までの転職であれば、転職先で指導する人の年齢の方が上である可能性が高いため、採用につながりやすいと言われるようになりました。
年齢と立場のギャップを気にする企業はあるかもしれませんが、一概に32歳を超えたら指導者が全員年下になるとは限りませんし、「本人同士が納得していれば良い」と判断をする企業もあります。そのため、32歳までに慌てて転職を急ぐ必要はないでしょう。
年齢別に解説。企業に求められることと選考で意識すべきポイント
実際に企業がそれぞれの年齢の人材に求めるスキル・経験には、どのような変化があるのか紹介していきます。さらに、あわせて転職時に意識すべきポイントも解説します。
>20代に求められるのは「ポテンシャル」や「意欲の高さ」
○企業に求められること
「第二新卒(新卒1~3年目)」や「ポテンシャル採用」という言葉が表すように、専門的な知識やスキルが備わっていなくても、20代は採用につながるチャンスがあります。20代は、仕事に対する「熱意」「謙虚さ」「素直さ」などの姿勢が評価される可能性が高いです。なぜなら、今までの実績だけではなく、入社後にどのように活躍してくれそうかという中長期的な可能性が評価されて入社するケースが多いからです。
また、ある程度の社会人経験がある20代後半の転職は、意欲やポテンシャルに加えて、前職での経験を転職先でも生かせるかどうかも採用担当者の評価のポイントとなります。コミュニケーション能力のほか、提案力や社内調整力などのビジネスに必要な基本スキルはもちろん、転職先で活かせる前職で培ったスキルを具体的にイメージしておきましょう。
○ポイント
25歳頃までの若年層の求職者は「第二新卒」という位置づけで、新卒採用者と同じような形で新人社員研修を受けられる可能性もあります。一方で、未経験でも応募ができるということは「とりあえず受けてみる」という状態になりやすく、転職軸が定まらないまま転職活動をしてしまう恐れがあります。転職軸を決めずに転職活動を進めてしまうと、仮に転職できた場合であっても入社後にミスマッチが発生する可能性があるので十分に注意しましょう。転職によって何を叶えたいのか、将来どのように転職先で活躍したいのかなど具体的な転職の軸を定めてから転職活動を行いましょう。
>30代に求められるのは「即戦力」
○企業に求められること
企業が30代の転職者に求めるのは、即戦力として活躍できる能力があるかどうかです。ポテンシャルが評価される20代よりも、より具体的な実務経験やスキルを見て判断されます。30代となると、多くの企業で中堅社員として活躍していたり、中には管理職に就く人もいたりします。その人たちと同等の業務を行ってもらうために、転職した直後から活躍できる人材を求めている企業が多いです。そのため、自身の経験とスキルを棚卸しした上で「自分は即戦力としてどのように貢献できるのか」を具体的に把握する必要があるでしょう。
○ポイント
能力があることをアピールするだけでなく、「その能力が転職先の業務でどのように活かされるのか」まで落とし込めないと、即戦力として活躍できる能力があると採用担当者に判断してもらえません。転職を検討する企業の業務内容を把握して、自身の経験やスキルがその企業でも応用できるのか確認し、具体的どのように活かしていくのかまで明確にしておきましょう。また、30代は マネジメント能力を見られることもあります。リーダーシップやマネジメント能力をアピールできるエピソードがあれば、転職活動の前に整理しておきましょう。
>40代以上に求められるのは「マネジメント能力」や「専門スキルの高さ」
○企業に求められること
企業が40代以上に求めることは、マネジメント能力もしくは専門スキルの高さです。チームやプロジェクトリーダーを務めた経験や部下の育成力などが評価されます。入社後すぐにマネジメント職としての活躍を求められるとは限りませんが、育成経験のある転職者は将来の管理職候補として採用を検討される可能性があるでしょう。
業種によりますが、専門スキルも採用の決め手になります。業界内でも水準の高いスキルや実績を持つ場合は、転職先でもその知見を社内に共有できると見込まれ、採用される可能性は高くなるでしょう。
また、20代や30代の年齢層に比べて40代以上の転職で重視されるのは、会社やチームに良い影響を与えられるか、部下のために何ができるのかなど、周りを巻き込める能力があるかなど、姿勢や人物面も評価されます。
○ポイント
選考では「マネジメント力」や「専門スキル」がどの程度応募先の企業で貢献できるのか示す必要があります。そのため、自身の経歴やスキルを分かりやすく選考の場で伝えることはもちろんのこと、事前に企業のコーポレートサイトやプレスリリースなどを確認し、その企業が注力している事業や今後求められている役割への理解を深めて説得力のある内容を準備しましょう。
また、転職の希望条件を整理しておくことも大切です。40代以上の求人は20代・30代と比べると少ない傾向にあり、選択肢はある程度限られます。そのため、希望条件を欲張りすぎると応募できる求人が極端に少なくなってしまうので、優先順位をつけて調整し、あまり選択肢を狭めすぎないようにしましょう。
年齢に左右されないために必要な転職準備
ここまで解説してきたように、年齢によって転職時に求められる要素は異なりますが、年齢を気にせず転職活動を進めていくためには、事前の準備が非常に重要です。ここからは、具体的に転職活動を進めるためにどのような準備をしておくのが良いか解説します。
>経験・スキルの構築
転職先で必要となるスキル・経験の構築は必須です。専門的なスキルも大切ですが、「問題解決力」「論理的思考力」などの仕事の基本となるスキルや周りを巻き込む「コミュニケーション能力」や人をまとめる「マネジメント能力」も実務を通して身に付けられると良いでしょう。マネジメント能力を構築するためには「新人教育の指導を率先して行い一人前に育てる」「管理職を目指して、社内で認められるための成果を残す」など、日ごろの業務の中で目標を持って業務を行うことが大切です。会社から与えられた目標だけではなく、自分がどのようなキャリアを形成するために、どんな経験が必要なのか具体的にイメージして小さな目標をひとつずつ設定していくと良いでしょう。
また、実際に部下を管理する「マネジメント経験」がなくても、プロジェクトリーダー経験などの経験がある場合は、十分アピールできる内容となります。選考時にアピールする場合は、採用担当者がプロジェクト規模をイメージしやすいように、何名規模で何か月程度かかったのか整理した上で伝えるようにしましょう。
さらに、専門職であればスキルを証明するための資格を取得するために計画的に勉強をしても良いでしょう。業務に必要な資格であれば、転職時に有利に働くことも多くなります。
>待遇や条件に優先順位をつける
転職先の選択肢を狭めすぎないためにも、仕事内容や勤務時間、役職や年収など、あれもこれも欲張って条件に含めないことが重要です。待遇や条件をひとつひとつ洗い出して、優先順位を付けて可視化していきましょう。絶対に譲れない条件、できれば叶えたい条件などを分類し、自分が転職先で何を叶えたいのか整理しておくことをおすすめします。
「研修の機会が多く、成長できる環境」「興味がある分野に挑戦できる仕事内容」「残業が少なくてワークライフバランスが整っている」「年収アップが期待できる」など、自分が思い描くキャリアプランやライフプランが実現できるかどうかを現実的に考えることも大切です。後悔しない転職のために、ある程度の譲れない条件を決めておいた方が良いですが、欲張りすぎて応募できる求人数が少なくなりすぎないように調整しましょう。
>必要な情報収集を的確に行う
情報収集を的確に行うことで、自信をもって転職活動が進められるようになります。なぜなら、企業が求める人物像と自分がマッチしているかどうか把握することができるからです。
そのためには、必ず求人票に掲載されている情報だけではなく、応募を検討している企業のホームページでプレスリリースや代表者のインタビュー、掲載されていれば決算資料などを確認し、今後どのような分野に注力していこうとしているのかをおさえておきましょう。企業が今後目指す方向性の中で、自分のスキルやキャリアが活かせることが証明できれば、選考時に採用担当者に 説得力を持たせた内容で自分をアピールできます。
また、未経験の業界に転職を考えている場合は業界研究を行うことも大切です。入社後には業界未経験であっても、業界の知識がある前提で仕事を任されることがあります。そのような仕事に対応できないようでは即戦力とはいえません。そのため、希望する業界で働く友人から話を聞いたり、四季報や業界の動向をまとめた業界本・新聞などを読んだりして業界全体の動向をおさえておくと良いでしょう。
まとめ
「転職できる年齢に限界がある」という噂はあまり気にする必要はありませんが、年齢によって企業から求められる経験やスキルは変化します。また、どの年齢であっても転職前の入念な準備は必要です。企業が求めるスキル・経験はもちろん、その企業が何を目指しているのかをおさえて、自分が入社することでどのように活躍できるのか具体的にイメージし、自信をもって転職活動に臨むようにしてください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー:
八重樫 勇輝
株式会社Reboot代表取締役
年齢:28
出身地:岩手県
趣味:漫画・映画鑑賞
経歴:
自分の転職活動の際、周囲のサポートで助けられたことをきっかけに、今後は自分が求職者の助けになることを決意し、起業。
現在は代表自ら求職との面談・就職支援を精力的に行う日々に明け暮れている。
求職者の皆様への一言:
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