転職活動にあたり、異業種へのチャレンジも視野に入れ検討している人もいるのではないでしょうか。また、その中には「異業種への転職の難易度」について知りたいと考えている人もいるかもしれません。
この記事では、業界や職種、年齢、経験など、気になるポイントに沿って現在の転職事情を分析しながら、異業種への転職の実情を解説していきます。転職時の業種選びの参考にしてみてください。
もくじ
異業種へ転職する人は多い
まずは、異業種に転職する人は意外と多い実情を解説していきます。
―そもそも「異業種」とは
業種とは、「建築業・情報通信業・医療・福祉業」など、企業が営む事業の種類を示すものです。業種の分類方法は、ハローワークや転職支援機関、各転職サイトで若干異なりますが、基本的には総務省が定めた日本標準産業分類の大分類を参照に分けられています。異業種とは、この業種の分類が異なるものを指しています。
また、業種と混乱しやすいのが、職種です。職種とは、経理、広報、営業というように、企業内での個人の業務内容を示すものです。異業種への転職といえば、今までとは全く異なる分野の仕事を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、業界が異なるだけで職種は関係ありません。
―転職者の約7割が異業種転職をする
総務省「労働力調査」によると、2010年から2019年まで転職者数は年々増加傾向にあります。その中でも、2020年1月にリリースされた株式会社リクルートキャリアの「転職決定者分析」によると、異業種に転職する人が意外と多いことが分かります。「転職決定者分析」では、全転職者のうち約7割は異業種への転職を遂げているという結果が出ています。異業種への転職は決してめずらしいことではなく、多くの人が異業種の仕事を探して転職している状況と言えます。
異業種への転職難易度は人それぞれ
異業種への転職を遂げている人は多いと示してきましたが、異業種への転職の難易度は年齢によって変化します。その理由をそれぞれ年代別に分けて解説します。
―20代の場合
まだ社会人経験が少ない20代の場合、既卒や第二新卒のフレッシュな人材として、やる気や人柄、将来性を重視して採用される可能性があるため、異業種の転職はそこまで難しくないことが多いです。
また、同じ20代でも「営業で年間○○社と契約を結んだ」など具体的な実績がある場合や、専門的な技術や資格を持っている場合であれば、給与水準の高い異業種に転職できる可能性もあります。そのため、収入アップにつながることもあるのです。さらに、全体的に年齢層が低い業種や、能力重視の業種への転職ができれば、 20代でも役職に就けるケースもあります。自分が叶えたいと思っていることが異業種への転職によって叶えられるのであれば、積極的に転職を検討してみても良いでしょう。
―30代以上の場合
30代以上の転職では、一定の経験やスキルが期待されますが、異業種への転職が必ずしも難しくなるわけではありません。今までの仕事で培ったスキルや経験を生かせる同職種または関連職種であれば、異業種でも十分に能力をアピールできます。
また、30代になるとマネジメント経験を求められることが増えてきます。「○○人のメンバーをマネジメントし、チームの売上前年比アップを実現した」など、マネージャーとしての具体的な実績や経験があれば、管理職経験者を求める企業への大きなアピールとなるでしょう。専門的なスキルや経験に加えてマネジメント経験もあれば、転職の選考時にアピールできるポイントが増えるため、評価が高くなる可能性があります。そのため、異業種への転職でも有利に働く場合があるので、マネジメント経験がある場合は合わせて選考時にアピールすると良いでしょう。
しかし、年齢が上がれば上がるほど、転職を検討する当事者が「せっかくこの業界でここまでやってきたのだから、どうせなら経験を活かしたい」という思いから、異業種への転職をためらいやすいという一面もあります。30代以上であっても今までのスキルや経験を活かせる業種への転職はそこまでハードルは高くないですが、自分の中で希望を整理して納得できる業種を選ぶと良いでしょう。
異業種の転職でおすすめの業界
人手不足が続く業界など人材を積極的に受け入れている業種には、自ずと異業種からの転職者も多くなります。たとえば、仕事はたくさんあるのに人材が不足している未充足求人数が多い業界がそれに当たります。
以下に厚生労働省の「雇用動向調査(令和2年上半期)」によって発表されている、未充足求人数が多い業界を中心に、異業種への転職でおすすめの業界を3つ紹介します。
―小売業界
令和2年6月末日の未充足求人数を見てみると、「卸売業,小売業」が最も多く、約19万となっています。つまり、最も人手が不足している業界であることを意味します。
中でも小売業界は、今までスーパーマーケットやドラッグストア、家電量販店など、店舗での販売を主流とするところが多かったのですが、近年では非対面での販売が普及しECに適応した企業が業績を伸ばす傾向にあります。そのため、小売業界の中でもEC事業に注力している企業などはおすすめと言えるでしょう。
―医療・福祉業界
専門的な技術や知識を要する職業が多い医療機関や福祉業界ですが、医療事務や営業、生活支援など、未経験から始められる仕事も多数存在します。厚生労働省「雇用動向調査(令和2年上半期)」によれば、もっとも入職者が多かった業界であり、約76万人の人が新たに医療・福祉業界で職を得ています。
「卸売業・小売業」に続いて、「医療・福祉」業界は未充足求人数も2番目に多く、異業種・異職種からの受け入れにも積極的であると考えられます。また、転職後、資格の取得などを通してキャリア形成がしやすいのもこの業界の魅力です。
―情報通信業界
多くの産業で未充足求人が減っている状況の中、情報通信業は前年同期と比較し約1.5万人増加し、最も増加幅が大きい結果となっています。未充足求人が増加しているということは、それだけ人手が求められている状況なので、伸びている産業であると言えます。
情報通信産業とは、具体的に「通信業」「放送業」「情報サービス業」「インターネット付随サービス業」「映像・音声・文字情報制作作業」の5つに分類されます。中でもソフトウェア開発・管理などを行う「情報サービス業」や、サイトの運営・管理、Webコンテンツの制作・提供を行う「インターネット付随サービス業」はおすすめです。経済産業省「IT 人材需給に関する調査」によると、2030年までに少なくとも約16万人がIT系の人材が不足すると予想されています。エンジニアやプログラマーなど専門スキルが必要となる職種も多いですが、未経験者であってもスキルが証明できれば応募できる求人もあります。これから需要が高まることが予想されている業種への転職を考えてみるのも選択肢のひとつでしょう。
異業種へ転職する人が多い職種5選
異業種へ転職する人が多い職種としては、以下の5つが挙げられます。
―接客・販売
接客や販売の仕事は人の移り変わりが比較的多い職種です。立ち仕事が多かった販売職からオフィス内の事務職へ、また、接客のスキルを生かせる営業職へなど、労働環境の改善やスキルアップを目指して、業種を変える人が多く見られます。
―マーケティング
マーケティング職は、データ分析のスキルやデータを基にした企画立案のスキルが身につく職種です。マーケティング職で学べるスキルはビジネスにおいて汎用性が高く、根拠に基づいて顧客に自社製品の魅力をアピールする営業職、データを基にした企画立案や改善提案を行うコンサルタント職など、さまざまな職種で有効活用できます。そのため、マーケティング職は、異業種への転職が多い職種となっています。
―営業
コミュニケーション力、交渉力、顧客管理力、社内調整力など、営業で身に付けたスキルは多くの業界で求められています。そのため、転職でも同じ営業職で異業種に転職するケースが多いです。有形営業から無形営業、大企業からベンチャーなど、販売するものが変わったり、企業の規模が変わったりしても、経験・スキルを応用しやすい営業職は異業種への転職が多い職種と言えるでしょう。
―事務・財務・経理
一般事務のパソコンスキルは、契約関連・請求関連など、ビジネスで発生するさまざまな書類作成業務に欠かせないものです。身に付けたパソコンスキルは、そのまま他の業界でも活用できるため、比較的異業種への転職が叶いやすいでしょう。また、財務・経理も汎用性のある専門スキルであるため、業種を越えて活用できることが多く、異業種の転職のハードルはそこまで高くありません。
―ITエンジニア
デジタルトランスフォーメーションが進む現在の社会では、ITエンジニアのスキルはどの業界でも歓迎されます。SIer やSESなどシステム開発やソフトウェアの保守・運用をメインで行うIT系の企業だけではなく、今や食品、建築、教育、マスコミ、金融など、あらゆる業種で常駐のエンジニアが雇用されています。働き口は多いため、スキルがあれば希望の業種に転職できる可能性も高いでしょう。
異業種への転職でよくある失敗とそれを防ぐ対処法
異業種への転職は非常に活発で、多くの人が業種、業界を飛び越えて転職しています。しかし、中には事前の情報収集が足りずに異業種への転職に失敗してしまう場合もあります。ここからは、異業種への転職でよくある失敗と対処法ついて解説します。事前に確認し、自分の転職時にはその失敗を起こさないようにしましょう。
―経験・スキル不足でなかなか選考を通過できない
憧れだけでは、異業種への転職はなかなかうまくいかないものです。まずは求人の内容をよく読み、企業が求める人物像を把握することから始めましょう。自分の経験やスキルが十分でないと感じる場合は、自分が転職先の企業でどのように活躍できるのか、数字や具体的なプロジェクトの例を挙げて根拠を選考書類に記載したり、面接時にアピールしたりしましょう。
具体例を挙げる際には、主観に基づいた抽象的な情報ではなく、「6か月の長期にわたるプロジェクトで、クライアントへのプレゼンテーションから納品までのすべてのプロセスに参加し、○○億の売り上げに貢献した」など、なるべく具体的な情報を伝えることが大切です。意識するポイントとしては、採用担当者にその企業で「長く活躍してくれそう」だと思ってもらえるように、応募先の企業の求める人物像に合致した内容をアピールするようにしましょう。
―採用担当者が納得できる志望動機が伝えられない
志望動機に説得力を持たせるには、応募先の企業の社風や募集している職種の内容を事前になるべく細かく調べておく必要があります。その会社の業界や知名度だけではなく、事業内容や文化、社風までしっかり見据えて、なぜその企業で働きたいのか、異業種でもさまざまな業種がある中、なぜこの業種を選んだのかを伝えると、面接官の共感を得られやすくなるでしょう。
志望理由を「待遇面が良かったから」など条件面だけの理由にしてしまうと、「よりよい待遇の会社があれば、そちらに転職してしまうのでは」と敬遠される可能性があります。また、会社の事業内容や業績、今後のビジョンなどをよく調べずに自分の理想を押し付けた動機を語ると、その企業の求める人物像と合致していない内容となってしまうことも考えられます。そのため、自分が応募先の企業で活躍する姿を面接官が想像しやすいように、その会社で具体的に入社後どんなことをしたいのか、 将来のキャリアプランはどのようなものなのかなど、採用担当者が納得する志望理由を事前にまとめておくと良いです。
―入社後、業務についていけない
異業種への転職は、業種が変われば仕事内容や雰囲気、文化も変わります。そのため、入社後「仕事についていけない」と悩む人は少なくありません。全く違う業種からの転職の場合、その仕事で使われる用語や習慣が理解できず、焦ってしまうこともあるでしょう。転職での入社のため「基本的なことを質問してもいいのか」「素直に質問をしていいのか」などと迷うこともあるかもしれません。また、同期が少ない、あるいは同期がいない場合、気軽に相談できる人がおらず、悶々と一人で悩み続けてしまうことも考えられます。
しかし、異業種からの転職で仕事についていけないのは当然です。企業側もそのことを含め、将来性に期待をして採用しているので、わからないことは素直にまわりに質問するなど、必要な知識や技術を積極的に学び、少しずつ慣れていくことが大切です。
まとめ
異業種への転職について解説してきました。全転職者のうち約7割は異業種に転職しています。もはや異業種への転職は珍しいことではなく、一般的なものとなっています。
異業種への転職を考える場合、未充足求人数が多い業界や欠員率が高い職種は、業種未経験者であっても人材を求めている可能性が高いです。そのため、そのような視点で業種を考えてみても良いでしょう。
また、実際に異業種への転職活動を行う場合、「なぜその業種を志望したのか」という志望理由と「転職後のキャリアビジョン」を明確にしておくことが、選考を突破するカギとなります。満足のいく転職を行うためにも、キャリアビジョンを見直し、自分の叶えたいことがどの業種にいけば叶えられるのか考えてみてください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー:
八重樫 勇輝
株式会社Reboot代表取締役
年齢:29
出身地:岩手県
趣味:漫画・映画鑑賞
経歴:
自分の転職活動の際、周囲のサポートで助けられたことをきっかけに、今後は自分が求職者の助けになることを決意し、起業。
現在は代表自ら求職との面談・就職支援を精力的に行う日々に明け暮れている。
求職者の皆様への一言:
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