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【転職ノウハウ】上場企業で働くメリット・デメリットは?



仕事を探すときに「上場」という言葉を目にしたり、耳にしたりする機会があるでしょう。また、上場企業と聞くと「大手」「安定している」といったイメージを抱く人が多いかもしれませんが、しっかりと定義を把握している人は少ないかもしれません。


この記事では、上場に関する基本的な知識や、上場企業に勤めるメリットとデメリットなど、上場企業に興味がある人向けの情報をまとめています。さらに就職・転職先の候補として上場企業を考えている人に向けて、実際に応募する前に知っておきたいポイントについて紹介します。

 

もくじ

 

上場企業とは


上場企業の「上場」とは、東京証券取引所の一部・二部、マザーズ、JASDAQ(2022年度以降再編予定、後述)をはじめ、名古屋・福岡・札幌にある各証券取引所で、会社の株式が売買されるようになることを指します。つまり上場企業とは、証券取引所に株式を公開している会社のことです。上場するためには、会社の財政状態や収益力、事業の継続性や健全性など、証券取引所が定めた厳しい基準をクリアしなければならないため、「上場企業は大手の優良企業」と捉えられることが多いです。また、上場企業の数は、国内にある約188万社(法人)のうち、約4,161社(2021年8月)となっています。その割合は、約0.2%ということで、非常に狭き門であることが分かります。

では、そもそも株式会社の仕組みや上場企業の見分け方について、以下で詳しく解説していきます。


―株式会社の定義


現在設立できる日本の一般的な会社の種類は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4形態あります。中でも株式会社は、日本の会社全体の9割以上を占めています。会社の形態によって、役員の数や出資者の責任、利益分配の方法などが異なります。株式会社ならではの最も大きなメリットは、自社の株式を発行して資金調達を行えるという点です。融資ではないため、株式によって集めた資金は、返済する必要がありません。株式会社は株を出資者に購入してもらうことで、企業が事業を行うために必要な資金を集められます。事業で得た利益は、株主(株式を所有する出資者)に還元したり、より一層事業を拡大するための運転資金としてさらなる企業の成長に活用したりします。一般に流通していない企業の株式を購入することは困難なため、上場(株式を一般公開)することで証券を通じて出資者を広く一般から募ることができるようになります。


―上場企業かどうかの見分け方


企業が上場しているかどうかを確認したい場合は、会社四季報や新聞の株式欄、各証券会社のWEBサイトの上場会社情報をチェックすると判断できます。さらに、日本取引所グループのWEBサイトでは、東京証券取引所の上場企業を検索することができるほか、上場廃止企業の検索もできます。上場廃止や市場区分の変更は頻繁に行われているため、最新情報を把握しておくと良いでしょう。

また、上場しているかどうかだけでなく、その企業が公開している決算短信や有価証券報告書などにも目を通してみると、その企業の業績や事業内容など、経営の内情がより詳しくわかるのであわせて確認するのがおすすめです。決算短信や有価証券報告書は各企業のWEBサイト、EDINET(エディネット)や適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で確認できます。


上場の種類とそれぞれの基準


一口に上場企業と言っても、会社の規模は異なります。日本を代表する世界的企業から、成長途中の新興企業までさまざまな会社があります。日本国内に証券取引所は東京・名古屋・札幌・福岡の4ヶ所あり、上場企業のうち約9割が東京証券取引所で上場しています。そのため、今回は企業数が最も多い東京証券取引所(※以下、東証)の内容に絞って紹介していきます。

東証の中でもすべてが同じマーケット上で取引されているわけではなく、市場第一部市場第二部マザーズ企業、 JASDAQ(スタンダード・グロース)、 TOKYO PRO Marketという5種類の市場があります。それぞれの上場の基準は下記の通りです。


東京証券取引所第一部

いわゆる「一部上場」と呼ばれる区分で、安定性、収益性、事情規模なども高い基準が求められます。一部上場企業の数は2,190社(2021年8月時点)です。

  • 株主数:800人以上

  • 流通株式数:20,000単位以上

  • 流通株式比率:35%以上

  • 流通株式時価総額:100億円以上

  • 企業の時価総額:250億円以上


東京証券取引所第二部

第一部と比較するとやや条件が緩やかで、中小企業といわれる規模の会社も多く属しています。条件が緩やかとはいえ、安定的な経営実績が求められます。

  • 株主数:400人以上

  • 流通株式数:2,000単位以上

  • 流通株式比率:25%以上

  • 流通株式時価総額:10億円以上


マザーズ

今後の成長が期待されるベンチャー企業や、東証第一部もしくは第二部への昇格を視野に入れている企業向けの市場です。ITやテクノロジー業界の注目企業が多くこの市場に上場しています。

  • 株主数:150人以上(上場時までに500単位以上の公募を行うこと)

  • 流通株式数:1,000単位以上

  • 流通株式比率:25%以上

  • 流通株式時価総額:5億円以上


JASDAQ

実績のある企業から新興企業まで多彩な企業が参加しています。市場は二部構成となっており、一定の事業規模や実績が求められる「スタンダード」と、成長性を重視した「グロース」に分かれています。上場審査基準に「最近1年間の利益の額が1億円以上」という利益項目があり、マザーズより条件が厳しく、製造業関連の中小企業や新興企業が多いのが特徴です。

  • 株主数:400人以上

  • 流通株式数:2,000単位以上

  • 流通株式比率:25%以上

  • 流通株式時価総額:10億円以上


TOKYO PRO Market

第5の市場として注目されている新興市場です。大きな特徴は、株式投資の知識や経験が豊富なプロ投資家のみが参加できるとことです。そのほかの市場に比べて決まった条件がないのも特徴で、幅広い企業がTOKYO PRO Marketで上場しています。

  • 株主数:制限なし

  • 流通株式数:制限なし

  • 流通株式比率:制限なし

  • 流通株式時価総額:制限なし


このように、上場企業といってもさまざまな企業があり、規模や実績も大きく異なります。上場企業への就職を考える際は、その企業がどの区分に属しているのかを確認すると良いでしょう。どの市場に上場しているかどうか確認することは、企業の成長力や安定力を測れるひとつの指標となります。なお、上場企業は毎年決算報告を公開し、会社の損益など会社の経営状況を自社のサイトなどで公開しているので見てみることをおすすめします



上場企業に勤めるメリットとデメリット


上場企業に勤めた場合、実際どのようなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットもあるのかについても解説します。


―上場企業に勤めるメリット5つ


では、まず上場企業に勤めることで考えられるメリットを5つ紹介します。


メリット1. ローンやカードの審査に有利

上場企業に勤めていると、安定した収入が期待できると判断される傾向があるため、返済能力が高いと見込まれ、銀行や信販会社の信用調査をクリアしやすくなるでしょう。ローンに関しても、倒産などのリスクが低いと考えられ、審査が通りやすくなります。


メリット2. 平均年収が比較的高い

東京商工リサーチが発表した上場企業の平均年収は603万2,000円(2020年4月~2021年3月)となっており、日本のサラリーマンの平均年収436万円(国税庁調べ)より高い水準であることが分かります。上場企業は、売上や利益がきちんと確保されていることが多く、働く人にも還元されることが期待できるため、給与水準は比較的高い傾向があります。また、 住宅手当や家族手当といった各種手当が充実していることもあります。


メリット3. コンプライアンス意識が高い

上場企業はコンプライアンスの意識が高い傾向があります。上場審査の基準の中には、「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」という項目があり、法令違反や不祥事が起きないような体制が構築されているか審査されます。そのため、審査の時点で社内の規定を厳しく設定したり、研修制度を充実させたりなど、法令違反や不祥事が起きないような体制を構築しています。万が一、上場後に法令違反や不祥事があった場合は上場廃止になる可能性もあるため、社内のコンプライアンスに対する意識が高く、違法性のある働き方を阻止しやすくなります。


メリット4. 規模の大きい仕事に関われる可能性がある

上場企業は資金調達がしやすいため、さまざまなプロジェクトに関わることができたり、ときには、大規模な事業案件に関われたりするチャンスがあることも。規模の大きい仕事に関わる機会が増えることで、自身のスキルアップやキャリアアップにつながるでしょう。


メリット5. 転職で有利になることがある

前述したとおり上場企業に勤めると、大規模なプロジェクトや大きな金額が動く案件に関わりやすくなります。上場企業でしか経験できないような、大規模なプロジェクトや案件に参加し実績を残せば、転職でも評価されやすくなる可能性があります。


―上場企業に勤めるデメリット2つ


上場企業に勤めるメリットが多くある一方、デメリットも存在します。主に考えられるデメリットは下記の2つです。


デメリット1. 革新的な挑戦をしにくい

上場企業は株主に実績や活動内容の報告義務があります。そのため、会社側の方針だけで経営を進めることは難しいのが現状です。例えば、「新しい技術の開発」「新事業をスタートする」など利益の見通しが立ちにくい事業は、コスト管理が厳しく、失敗した際のリスクも高いことからなかなか挑戦しにくいことも考えられます。


デメリット2. 融通が利きにくい

コンプライアンスの意識の高さはメリットにもなりますが、ときにはデメリットになることもあります。法令順守は当然ですが、法令以外の社内規定のために各所に確認が必要で柔軟に物事に対応できない、というような不自由さを感じる場合もあるでしょう。



有名な企業でも上場していない企業は多く存在する


有名な企業でも、上場していない企業はたくさんあります。例えば以下の日本の企業は上場していません。


上場していない日本の有名な企業の例


  • サントリーホールディングス株式会社

  • 株式会社竹中工務店

  • アサヒ飲料株式会社

  • カルピス株式会社

  • ヤンマーホールディングス株式会社

  • 読売新聞社、朝日新聞社などの新聞社各社


また、Meta Platforms, Inc.(旧称:Facebook, Inc.)やIKEA International Groupなどの外資系企業の日本法人にも非上場の大手企業が多くみられます。上場することによって「資金調達方法の選択肢が増える」「社会的信用も得られる」といった面がある一方で、経営の自由度が失われる一面もあります。上場企業は株主に対しての説明義務があり、株主の意向を汲んだ経営戦略を立てていかなければいけないからです。つまり、企業単体での意思決定ができなくなり、決定までの時間もかかるようになります。中でも、新聞社各社はその点を考慮して、株主の意向に左右されずに報道の公正中立の立場を守るために上場していないといわれています。

また、上場企業は有価証券報告書や決算短信、適時開示資料などの企業情報をWEBサイトや株主総会で公表する必要があります。そのためには定期的にリソースを割かなければいけません。さらに、上場を維持するための取引所に支払う年間上場料などのコストも発生します。このように上場する必要がない企業は、経営の自由度を維持するため、上場するためのコストをかけないためなどの理由から、あえて非上場を選ぶ企業もあります



まとめ


上場するには企業の規模や経営状態など、一定の基準を満たした企業のみしか認めらません。そのため、上場企業であるということは、資金力や社会的信用がある企業であることの証明につながります。ただし、上場企業で働くことはメリットもあればデメリットも存在します。本当に自分が上場企業で働くことを目指すべきかどうかは、両面を把握したうえで検討すると良いでしょう。

また、有名な企業であっても、あえて上場を選ばない企業も数多く存在します。安定性を重視するために上場企業だけの就職を視野に入れるのではなく、自分の希望に合致する企業を広い選択肢の中から選ぶようにすることをおすすめします。

 

この記事を監修したキャリアアドバイザー:


八重樫 勇輝 

株式会社Reboot代表取締役


年齢:29

出身地:岩手県

趣味:漫画・映画鑑賞


経歴:

自分の転職活動の際、周囲のサポートで助けられたことをきっかけに、今後は自分が求職者の助けになることを決意し、起業。

現在は代表自ら求職との面談・就職支援を精力的に行う日々に明け暮れている。

求職者の皆様への一言:

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